にとって、アラシヤマはいつだって救いだった。
仕官学校時代、自分より年上のアラシヤマにいつもくっついて歩いていた。
つき合いがあまりなかったので多くの者は知らないだろうが、アラシヤマはいつも優しかった。
大好きだと思った、その想いが少しずつ増し、ゆらぎないものとなったのはいつのころからか。

だからこそ4年前、アラシヤマたち伊達集がそれぞれ隊長に就任し、が紫隊へ配属になったとき。
は、アラシヤマの名を呼ぶことをやめ、言葉使いも敬語に直した。
女らしさ?そんなもの、捨ててしまえ。
ガンマ団内唯一の女性団員という特殊な立場の自分が、団内に波を立ててはならない。
ただ男と同程度、いやそれ以上の力を持って、アラシヤマをサポートする。それのみに徹する。
私心を匂わせてはならない。
いつも一緒にいられることが嬉しいなどと。

ガンマ団紫隊、。

ただそのことに、誇りを持って、どこまでもついてゆこうと。
言いたい言葉は、言ってはならない、我慢すべきであると。4年前に誓ったのだ。
そう、どちらにしてもあの日の記憶がある限り。





私は人を好きだと想ってはいけない。





目を覚ますと、4年前より哀愁が加わり、大人びたアラシヤマの顔があった。
はまどろみの中で見たアラシヤマとの違いに混乱し、手を伸ばしてアラシヤマの髪をなぜた。

「・・・?アラシヤマ・・・?」

4年ぶりでその名を呼べば、アラシヤマはさっとの手から逃れるように立ち上がりった。
そのままふいと横を向く。
それによっては自分が寝ぼけていたことに気づいた。
慌てて、寝かされていたらしい寝床から起き上がり言う。

「も、申し訳ありません隊長!え、と・・・私は・・・?」

森の中でアラシヤマと話したのは覚えている。
そうしてそのあとどうしたのだったか?

「あんさんあのあと過呼吸起こして倒れはったんどす。とりあえずわてがどうにかしましたけど」

「か、過呼吸・・・」

「そのまま気ぃ失いはったんで、とりあえずここに運び込んだんどすわ」

「ここは?」

「雨風しのげそうな場所が、ここ以外近くになかったんどす。洞穴どすけど、まぁ何とかなるでっしゃろ」

こちらを見もせずに、アラシヤマは言った。
あたりまえだ。無能な部下にせっかくのチャンスをふいにされ、迷惑をかけられてうんざりしているのだろう。
こんなはずではなかった。この島に来てからどうもうまくいかない。

「・・・倒れたあとのこと覚えとりますか?」

「すみません・・・記憶が曖昧です」

「そうどすか、ならええんどす・・・」

「え?」

「そ、そうそう、あんさんが持ってきはった通信機器どすけど」

「あ、はい。防水のものを持ってきたので、それだけはなんとか・・・」

「この島圏外でっせ」

「え」

通信機器一式をよこされ、も試してみるが繋がらない。
圏外。電波皆無。

「ま、まじかよ・・・」

「わてもここにきてから色々と試してみたんどす。携帯、無線・・・すべてだめどしたわ」

「隊長携帯持ってたんですか」

「今はわてらの力でなんとかするしかないようどすな」

見事なスルーをかまされ、はそこには触れるべきではないのだと理解した。
アラシヤマは続ける。

「問題はリキッドや。しばらく情報収集に入りまっせ」

「・・・はい」

はいまだ一度も振り向かないアラシヤマの背中を見つめた。
何年でも、我慢できると思っていた。
それが、なんだ。
その背中に抱きつきたいなんて。



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